乳幼児てんかん

昨夜は小児てんかんの大家 渡辺 一功(わたなべ かずよし)先生の講演会に行って来た。渡辺 一功先生は1987年に名古屋大学小児科の教授に就任されており、私が医師になって4年目に静岡てんかんセンターで臨床てんかん学専門トレーニングを始めた1992年当時、小児てんかんカンファレンスで渡辺先生のお名前が出ない日はなかった。

渡辺先生の示された乳幼児の脳波、とくにてんかん発作中の脳波は大変なインパクトだった。幼少児の脳波検査は難しい。幼稚園、小学校低学年頃まではなかなか検査をおとなしく受けてくれない。ましてや生まれたばかりの赤ちゃん、新生児、乳児の脳波検査はとても大変だ。脳波検査に現実に携わっている医師なら重々実感していることで、渡辺先生の研究はおいそれと真似できない。大変な労力・苦労の賜物だ。専門家ほどその価値がわかる。世界中のてんかん専門医が驚嘆したのも当然だ。

渡辺先生のご専門である乳幼児てんかんは、産科、新生児科といった分野とも大きく関わり、てんかん学のなかでも特に専門性の強い分野だ。私は成人てんかん、小児てんかんのいずれも診療するが、乳幼児てんかんだけは手に負えない。乳幼児てんかんの専門家に委ねる。乳幼児てんかんは部分てんかんなのか全般てんかんなのか判断つかないことが多々あり、両者が混在していることも珍しくなく、診断・治療が手ごわい。精神発達障害を伴っている場合は福祉施設の関与が重要である。