てんかん

子癇(しかん)

妊娠は母体にいろいろな影響をもたらす。 子癇とは妊娠中・周産期に痙攣、意識障害を 起こすもので、症状はてんかんに似ているが てんかんではない。 原因は種々であるが血圧上昇を伴うことが多く、 高血圧脳症との関連が考えられている。いまむら脳神経クリ…

てんかんと脳波

てんかん診療で1回の脳波検査で異常波が検出 できるのは報告によれば30%〜50%とされている。 脳波で異常が検出しやすいてんかんもあれば 脳波で異常が出にくいてんかんもある。 また抗てんかん薬を開始する前の脳波検査が 最も発作型を反映している。 いまむ…

てんかんの意識変容

てんかんではしばしば意識の変化が見られる。 部分てんかんでは意識減損と表現するように 意識の低下の程度がさまざまである 全般てんかんの小児欠神てんかんでは意識が 完全に消失する。 病歴聴取で意識変容の程度、性状をきちんと 確認することが正確な診…

一過性てんかん性健忘

健忘(けんぼう)とは記憶がすっぽり抜け落ちてしまうことである。 健忘で多いのが逆行性健忘、一過性全健忘である。 逆行性健忘は頭を強く打った後に多く、その前のことが思い出せない。 一過性全健忘とはある間の出来事を思出せないことで 自分が何をして…

脳とポルフィリン症

ポルフィリン症とはヘム合成回路(ポルフィリン合成回路)の 酵素が機能しなくなることでヘモグロビン、ミトコンドリア系が 障害されて症状が生じる。肝臓性と皮膚性がある。 肝臓性のポルフィリン症ではしばしば頭痛、意識消失が生じる。 てんかんの症状と…

抗てんかん薬と授乳

抗てんかん薬のなかで胎児の奇形率が高いのは バルプロ酸(デパケン、セレニカ、バレリン)である。 その一方、バルプロ酸は母乳への移行率が低い。 母乳への移行率が高いのはエトスクシミド(ザロンチン)である。 多くの抗てんかん薬は母乳移行は微量なの…

てんかんの種類

てんかんは全般発作と部分発作がある。 両者には意外と紛らわしいものがある。 典型的な場合は鑑別が容易であるが、 そうでないものでは判断に専門性を要する。 特に小児てんかんでは難しい。 引間昭夫 子どものホームケアの基礎 http://www.kodomo-homecare…

てんかんと間違いやすい正常脳波

脳波検査はてんかん診療に不可欠だ。 脳波判読は専門性が強く、脳波専門医でないと、 てんかんと間違いやすい正常脳波を異常として 抗てんかん薬を服用させてしまっていることがある。 こういうケースでよくあるのが小児の入眠時過同期だ。 睡眠脳波の一種で…

てんかんと間違いやすい正常脳波

脳波検査はてんかん診療に不可欠だ。 脳波判読は専門性が強く、脳波専門医でないと、 てんかんと間違いやすい正常脳波を異常として 抗てんかん薬を服用させてしまっていることがある。 こういうケースでよくあるのが小児の入眠時過同期だ。 睡眠脳波の一種で…

てんかんと似ている症状

てんかんと似た症状を示すものに 失神、心因性非てんかん性発作がある。 熱性けいれんは小児に多い。 おとなは熱中症でけいれんを起こすことがある。 失神は神経調節性失神が多いが、時に てんかんと誤って診断されて抗てんかん薬を 処方されていることがあ…

てんかんとグリア細胞

脳は神経細胞とグリア細胞が主な構成体である。 てんかんは神経細胞の異常な電気興奮とされ、 グリア細胞は無関係と思われていたが、 最近、グリア細胞も大きく関与していることがわかってきた。 グリア細胞の働きの一つである過剰に放出されたカリウムなど…

脳波認定施設に認可

日本臨床神経生理学会(脳波筋電図学会)が今年10月から 新たに始めた脳波認定施設に当院が認可された。 専門医指導医が常勤で在籍することが必須で、 指導医が異動、退職すれば認可取り消しだ。 当院は院長の私が専門医指導医で異動も退職もない。 指導医制…

11月2日 日本てんかん学会(京都)

日本てんかん学会(京都)にやって来た。 今日は正午から評議員会。一般参会は明日から。 てんかん学会評議員は全国で260名。 鹿児島県では3名。そのひとりとして てんかん診療の今後について夕方まで協議。 京都国際会館に籠りきりだ。 いまむら脳神経クリ…

海馬の沈黙発作

海馬は側頭葉てんかんの原因の多くを占める。 しかし脳の深部に位置しているため、 通常の脳波検査で異常所見がしばしば拾い切れない。 つまり脳波所見が認められないのに発作があることは 珍しくない。「海馬の沈黙発作」と表現されることもある。 米国マサ…

てんかんと認知症

認知症の患者さんが新たにてんかんを発症する リスクは一般人口の5〜10倍高く、特に海馬の 萎縮が原因のアルツハイマー型認知症では 認知症になってからの経過中に10〜22%のヒトが てんかんを新たに発症する。てんかん発作が 頻発すると海馬の破壊が進行して…

頭鳴と幻聴

頭鳴とは平たく言えば耳鳴が頭の中で起きる ものである。多くは原因は脳、耳の異常で、 また耳鳴が頭鳴として自覚されていることもある。 頭鳴の中には脳の聴覚野という音を聴く機能を 司る部位の異常のことがある。 また片頭痛、てんかんの症状のひとつとし…

てんかんと夜驚症

夜驚症とは小児の睡眠障害で、寝ているときに 突然泣いたり叫んだりする。幼児期〜小児期に 始り、自然に収まってきて、遅くとも思春期 までに治癒する。しかし夜驚症と思っていたら、 てんかんだったということもある。 夜驚症は入眠三時間後くらいのぐっす…

けいれん≠てんかん

てんかん発作は脳の電気信号が一時的に乱れて起こる。 慢性的に繰り返す。一回だけの症状はてんかんの定義を 満たさない。てんかんの症状のひとつにけいれんがあるが、 けいれんの原因はてんかん以外にもたくさんある。 一回だけけいれんを起こしたからとい…

脳波筋電図指導医(第一期生)に認定

今年開始となった日本臨床神経生理学会(脳波筋電図学会)の 指導医に認定された。専門医を指導する立場で鹿児島県では 数名というところだ。 日本臨床神経生理学会が専門医制度を開始した2007年に 専門医第一期生として認定され、2017年開始の指導医制度で …

抗てんかん薬と薬剤性過敏症症候群

薬疹を起こさない薬はない、 漢方薬、健康食品、ビタミン剤でも薬疹は起きる。 薬疹の多くは服用開始後1〜2週間後に起きるが、 1か月〜数か月〜数年後に起きることもある。 薬疹にウイルス感染が合わさって生じるものを 薬剤性過敏症症候群という。原因とな…

欠神てんかんと複雑部分発作

欠神てんかんは全般てんかんの代表例で、 複雑部分発作は部分てんかんの代表例であり、 両者は治療法が大きく異なる。逆の治療を 行なうと発作が時にかえって悪化する。 この両者は意外に症状が似通っており、 症状だけで判断すると診断を誤ることがある。 …

アイカルディ症候群

アイカルディ症候群(Aicardi syndrome)は 精神発達遅滞、点頭てんかん、眼の異常等の 症状を来す病気で遺伝子X染色体異常が原因である。 頭部CT、MRIで脳梁欠損を認める。 遺伝子異常なので根治不可能で、点頭てんかんも 難治性であるため、現時点では医療…

パナエトポラス症候群 Panayiotopoulos syndrome

パナエトポラス症候群とは小児の良性後頭葉てんかん のひとつで幼児〜小学生に起きる。 睡眠時、起床時に顔面蒼白、嘔気、嘔吐に始まり、 意識が減損する。時に全身痙攣を起こす。 多くは数回の発作で治癒するが、抗てんかん薬の 服用を検討することもある。…

PNES 心因性非てんかん性発作

心因性非てんかん性発作は偽発作ともいわれる。 発作症状がてんかんと似ているが矛盾する症候があり、 脳波検査で異常がない。抗てんかん薬が効かない。 そういう場合、疑う。本人が意識している場合もあるが、 無意識に発作を起こしていることも少なくない…

異常と誤りやすい小児の正常脳波

こどもの脳は14歳でおとなと同等になる。 それまでは成長の過程を反映して脳波で特有の所見を示す。 時にそれが異常と見誤られて、てんかんと誤診されることがある。 小児の脳波は慎重に解読する。 http://naraamt.or.jp/Academic/kensyuukai/2005/kirei/nou…

てんかんと脳波

医学生の頃、神経生理学の授業で脳波の講義があった。 脳波はヒトの脳神経の活動を可視化する検査で ヒトの心、精神が目で見えることに感銘を受けた。 しかし大学病院での臨床講義、臨床実習で脳波は ほとんど顧みられず、残念だった。 脳波の読影には高度の…

てんかんと猛暑

てんかんの治療のひとつに脳を冷やす方法がある。 神経細胞は冷えると活性が低下する特性を利用したものだ。 実用化が難しいが、発想としては悪くない。 逆に神経細胞は熱で活性化する。 猛暑、熱中症がてんかん発作を惹起する危険がある。 ほどよく冷やすこ…

飲酒と海馬

「酒は百薬の長」、「適度の飲酒は健康に良い」という諺が あったが、21世紀になっての研究で否定されている。 お酒を全く飲まないことが一番の健康につながるということだ。 最近の研究で飲酒は海馬を萎縮させるという報告が複数出ている。 海馬は記銘力、…

てんかん罹病が増えている

アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention) は米国でのてんかんに罹る患者数が増加していることを報告した。 http://epilepsyu.com/blog/americans-living-epilepsy-ever/ てんかんの診断技術が進歩してきていること、ま…

抗てんかん薬と低ナトリウム血症

塩分の主成分はナトリウムとクロールだ。 体内のナトリウムは神経細胞の活動電位発生に強く関与している。 てんかんの場合、この活動電位を抑えることで発作を抑制する作用の 抗てんかん薬が広く用いられている。フェニトイン、カルバマゼピン、 ラモトリギ…