無理な診断書 1

診断書に対して、世間一般に過剰な期待があるようだ。

今の私はいわゆる診断書を書くことはない。
医者になりたてで脳外科医として修行していた頃は
交通事故、救急車、労災を多く受けており、大量の診断書を依頼されていた。
なかには、とうてい無理なことを書けとの要求もあり、困った。
保険金など金銭絡み、障害認定など特にその傾向があった。

現在は、てんかん、頭痛、めまいに特化した専門的診療に絞っているため、
診断書を書くことはない。てんかん医療費公費負担(自立支援)の書類は
多く書いているが、これは意見書である。

とはいえ、たまに無理な診断書を要求されることもある。
たとえば。。。

1.初来院して、
  「他の病院で、てんかんと診断されたが、納得できない。
  てんかんでないことを証明する診断書をすぐに書いてほしい。」

   ・・無理。
     運転許可の診断書も無理。

2.「先週、先月、欠勤してまずい状況になった。
  それをどうにかする診断書を書いてほしい。」

   ・・診断書は診断したことしか書けない。
     過去にさかのぼって診断・証明する事は不可能である。


3.「今の頭痛、めまいが以前の交通事故が直接の原因であることを
  証明する診断書をすぐに書いてほしい。」

   ・・低髄圧症候群の可能性はあるが、当院では証明できない。
     証明できないものは書けない。

例挙すればきりがないが、無理なものは無理なのである。
診断書は保険診療外であり、義務ではまったくない。
医師が必要を認めなければ、要求されても書く義務は全然ないのである。

診察が終わって、唐突に無理筋の診断書を要求されると、
それが目的だったのかとがっくりくる。