脳外科と救急

 平成元年、脳外科医として働き出した。
各地の病院を転々とした。
最初の4年間、一般脳外科医として
もっぱら脳卒中(脳血管障害)と頭部外傷の診療に従事した。
いわゆる脳外科救急である。
望ましい医療体制は欧米のように独立した救急科(ER)が
救急を受け入れ、専門家に依頼なのだが、当時、都市部以外は
一般診療科の兼務が実情であった。
そういう初期トレーニングの後、自分の専門分野を選び、深めていく。
(何でも屋も必要であるが、それはむしろ専門性を持たない医師の職務である。)

 私は一般脳外科の研修後、平成4年〜6年、国立てんかんセンターに採用となり、
てんかん外科、脳波解析など、てんかん診療漬けの日々を送った。そして機能的脳外科、
てんかん外科、頭痛、めまいといった分野を専門として選び、救急医療から離れた。
とはいえ、そういう救急ではない分野でも、背後にクモ膜下出血脳梗塞など
救急疾患の関与を常に念頭におく必要性があり、やはり救急と無縁ではない。
若いうち、ある期間、救急医療に従事するのは大変価値のあることだ。