脳神経

線維筋痛症

レディーガガが線維筋痛症を公表した。 線維筋痛症とは全身の強い痛みが慢性的に続く病気だ。 脳の誤作動が原因と考えられているが、多くは検査で 異常がみつかならないため、診断が困難だ。 治療が難しいのも特徴だ。治療薬として プレガバリン(リリカ)、…

脳とビタミンB1

脳はエネルギー源としてブドウ糖(グルコース)しか利用できない。 ブドウ糖をエネルギーに変えるにはビタミンB1が不可欠だ。 ビタミンB1が不足すると脳が正常に機能しなくなる。 ひどくなるとウェルニッケ脳症を起こして、記憶力が低下、 作り話を始める。…

美容院脳卒中症候群

美容院脳卒中症候群(Beauty Parlor Stroke Syndrome)とは シャンプー中に頭部を後ろ向きに過伸展することで頚部を走って 脳に向かう血管が損傷されて脳血管障害が出現する症状をいう。 美容院に限らず過伸展が起きる状況であれば生じる。 欧米ではカイロプ…

飲酒と海馬

「酒は百薬の長」、「適度の飲酒は健康に良い」という諺が あったが、21世紀になっての研究で否定されている。 お酒を全く飲まないことが一番の健康につながるということだ。 最近の研究で飲酒は海馬を萎縮させるという報告が複数出ている。 海馬は記銘力、…

舌の神経

ヒトは舌で味を感じる。舌触り、喉越しも重要だ。 舌は前と後ろに分かれる。後ろは喉に近い方で 舌咽神経(ぜついんしんけい)が味と喉ごしを感じる。 一方、舌の前は味は顔面神経、舌触りは三叉神経 (さんさしんけい)が感じる。 食事には複数の神経が関係…

脳と験担ぎ

験担ぎ(ゲンカツギ)とは大切なことの前に 行なう行為であり、過去に良い結果の出たことを 繰り返すことである。英米でのジンクス、ルーチンと 同義と考えてよい。特定の服、靴、装飾品をまとう 行為も含まれる。 この行為を行うことで脳の機能が安定すると…

神経の連絡網

神経は脳からつま先まで全身に走行して連絡網を形成している。 連絡網が途切れると麻痺症状、認知機能低下となる。 過剰興奮で発振状態になるとてんかん、けいれんを惹き起こす。 脳神経の診断は神経連絡網のを熟知していることが前提だ。 いまむら脳神経ク…

錐体交叉(すいたいこうさ)・・左右が入れ替る

錐体(すいたい)とは脳の延髄の一部である。 脳の運動皮質から脊髄に下降していく神経が通る。 錐体を通るときに神経の大部分(およそ90%)は 反対側に向かう。これを錐体交叉という。 そのため脳梗塞など延髄よりも上の病気では 運動麻痺は病変の反対側…

咳止め薬 コデイン

厚生労働省は咳止めに使われるコデインを含む医薬品を 12歳未満に処方しないようにする方策を出した。 コデイン(リン酸コデイン)は脳の延髄の咳・呼吸中枢を 抑制することで咳を抑える。市販の咳止めに少量 含まれていることがある。含有量が多いと麻薬扱…

発達障害

発達障害という精神科病名が知られるようになってきた。 その反面、拡大解釈で安易に発達障害と決めつけられて しまうことも起きている。発達障害は精神科医が 専門的に診断をくだすものである。 脳神経外科医が扱えるものでない。 その反面、てんかんの患者…

レム睡眠行動障害

夜中に突然暴れ出す病気にレム睡眠行動障害がある。 高齢者に多くみられる。多くは原因不明だが てんかん、レビー小体型認知症、パーキンソン病、 脳腫瘍などが潜んでいることがある。 いまむら脳神経クリニック公式ホームページ 病院口コミサイト(鹿児島県…

小脳の働き

小脳は頭の後ろ下方にある。 小脳の真中は虫部、両側は左半球と右半球である。 虫部と半球は働きが異なる。 小脳虫部が障害されるとバランスが取れなくなる。 小脳半球の障害では手足の協調がうまくいかなくなる。 口がもつれることもある。 いまむら脳神経…

脳脊髄液(CSF)

脳にリンパ液はない。 代わりに脳脊髄液という透明な液が脳と脊髄を循環している。 脳脊髄液の流れが滞ったり、過剰になったりすると水頭症、 少なくなると脳脊髄液減少症という病気になる。 いまむら脳神経クリニック公式ホームページ 病院口コミサイト(鹿…

脳内リンパ(グリンパティック)

リンパは体の老廃物を排出する組織である。 従来、脳にはリンパは存在しないと言われていたが、 米国ロチェスター大学メディカルセンターの研究チームが 脳にもリンパ系システムがあることを証明した。 脳の老廃物排出システムは眠っている間に作動する。 睡…

手の痺れ

手の痺れは色々な原因で起きる。 痺れにもいろいろな種類があり、問診で確認する。 さらに痺れの部位、神経学的検査であたりをつけるのだが、 脳神経外科医としてはまずは命を脅かす脳梗塞、脳腫瘍の有無を 頭部CTでスクリーニング検査する。緊急性ないこと…

朝中華

先週末のパシフィコ横浜での学会。 みなとみらい駅からアクセスの良い元町で 朝7時から開いている中華料理屋に行き、 朝食をとった。中華風揚げパンと点心。 お勧めの五目もち米焼売、絶品だった。 元気が出たところで学会場へ。 https://r.gnavi.co.jp/a054…

民間療法

20年近く前か、てんかんを民間療法で治すと言って 大学病院の外来に来なくなった患者さんがいた。 それから半年後、皮膚科からその患者さんの紹介来た。 風呂場でてんかん発作を起こして意識ないまま 熱湯シャワーで全身の重度火傷で入院。 植皮受ける羽目に…

てんかん診療ガイドライン

現代の医療は科学的根拠に基づいて作成された 診療のガイドラインを遵守して行う。 てんかん診療のガイドラインは日本では 日本てんかん学会と日本神経学会が作成している。 内容は同一であり、国際抗てんかん連盟の ガイドラインに基づいている。 ガイドラ…

科学的根拠に基づく医療(evidence-based medicine, EBM)

医師になって4年目、静岡てんかんセンターで研修していた時、 回診、症例検討会でのプレゼンテーションで意見を述べると 「それは何という論文に書いてあったのか?」と訊かれた。 これはアメリカの何々という論文の考察に記載がありましたと 答えなければな…

酸素は両刃の剣

ヒトは酸素がないと生きていけない。その一方、酸素がラジカル化されると 活性酸素という有害な物質になる。活性酸素の中で最も傷害力の強いものが フリーラジカルだ。 私が研修医だった平成初めは脳梗塞急性期の患者さんにマスクや鼻カニューレで 高濃度の…

フリーラジカル・スカベンジャー

脳梗塞直後にフリーラジカルという有害物質が生じて 脳神経を障害する。このフリーラジカルを抑えるものが フリーラジカル・スカベンジャーだ。脳梗塞発症直後の治療に有用だ。 これに目をつけた業者がフリーラジカル・スカベンジャー効果を 謳ったサプリメ…

ビタミンB1を多く含む食物

脳はブドウ糖しか利用できない。 ブドウ糖の利用にはビタミンB1が不可欠であり、 ビタミンB1不足は脳の認知機能を低下させる。 認知症の原因がビタミンB1不足のことも稀ではない。 いまむら脳神経クリニック公式ホームページ 病院口コミサイト(鹿児島県) …

脳と電気

脳は電気信号で情報を伝えている。 電気と言っても電化製品のようにコンセントからの 交流電源によるものではなく、脳神経細胞のナトリウムイオンと カリウムイオンの間で生じる微少な電位差で情報伝達をしている。 オンとオフのデジタル方式だ。これに神経…

脳の通信プロトコル

玉川大学脳科学研究所を中心とする研究班が 脳の通信プロトコルを解明したと発表した。 脳の異なる領域同士がスパイク信号を使って 情報をやりとりしている仕組みの研究だ。 認知症、てんかんなどの疾患はこの仕組みに 障害が出ている可能性があり、興味ある…

乳児ボツリヌス症

ボツリヌス菌中毒で生後6ヵ月の乳児が死亡した。 市販の蜂蜜を混ぜたお手製ジュースを離乳食として 一ヵ月間与えていたという。 ボツリヌス菌は神経毒があり、けいれん、呼吸困難を 起こす。蜂蜜にも微量含まれているが、ヒトは通常は 腸の常在菌が存在する…

状況失神

状況失神は神経調節性失神のひとつであり、排尿、排便、嚥下といった 日常動作、また痛み、嘔吐などといった状況で誘発される失神である。 てんかんとの鑑別を要する。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma/71/6/71_542/_pdfいまむら脳神経クリニック…

もうひとつのアスピリン・パラドックス

少用量のアスピリンは脳梗塞、心筋梗塞の再発予防に有用であるのだが、 量を増やすと逆にその効果は失われる。アスピリン・パラドックスだ。 もうひとつのアスピリン・パラドックスは別の意味で使われている。 無症状のヒトに予防的に少用量のアスピリンを服…

脳悪性リンパ腫

俳優 松方弘樹氏が亡くなった。 死因は脳悪性リンパ腫。 悪性リンパ腫は全身にできるが、脳にできるものは 脳そのものにできるものと他の部位にできたものが 脳に転移するものがある。どちらも生命予後が悪い。 症状は頭痛、麻痺などだが認知症のような知能…

訃報 太田富雄名誉教授

Japan Coma Scale(JCS)を確立した脳神経外科重鎮、太田富雄名誉教授が 亡くなられた。京都大学脳神経外科から大阪医科大学に初代教授として赴任。 私が脳神経外科医を志した当時、太田先生の編集された「脳神経外科」という ぶ厚い教科書はバイブルであり…

気温と体温

今朝はひときわ寒い。 ヒトは体内の酵素がきちんと働かないと不調を来す。 酵素活性には至適温度があり、およそ37℃前後だ。 外気が変化すると皮膚の温点、冷点が脳の視床下部に その情報を送り、視床下部は体内の温度が酵素活性の 至適温度から大きくずれな…